IT徒然草 (gaia) -2ページ目

Twitterは曲がり角に立っている?

Twitterというサービスが今、曲がり角に立っている感じがする。

というのも、先日発表された「Twitter API の新バージョン1.1 導入」関連の各種制約条件追加に、ネガティブな見方が広まっているからだ。追加される制約条件の概要は、以下のURLを見ていただきたい。

TwitterがAPI新バージョンへの移行を発表、利用数上限や承認など厳格化(Internet Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120820_554005.html

縁が無い方には「API」 が分かりづらいかもしれないが、簡単にいえば、「Twitter本家のデータ・機能にアクセス可能な第三者向けインターフェース」のこと。イメージ的に言うと、「特定のURLにアクセスすると、ツイートが取り出せる・ツイートできる・ユーザが検索できる」みたいな感じ。実際にはもっと複雑だが。

この仕組みを使うことで、Twitter公式アプリ以外のいろんなクライアントアプリが作れたり、bot(自動ツイートプログラム)が作れたり、解析サービスが作れたりする。なので、世界中のプログラマーがそこに機会を見出し、機能豊富なサードパーティのアプリやサービスが様々存在するわけだ。逆にもし API が使えなければ、世の中には Twitter 公式サイトと公式アプリしか存在しなくなる。

で、今回の制約条件追加については、それを促進する面と阻害する面が組み合わさっており、またその詳細ドキュメントが未公表ということもあり、疑心暗鬼を生んでいるという面も加わって、やや混沌とした状態である。

私なりにその制約条件を俯瞰してみると、門を閉ざす要素が目立ち、サードパーティとの良好なエコシステムを発展させようという印象は少ない。「表示規約に則るべし」ぐらいならまだ、「仕方ないなぁ」と不平を言ってプログラム修正する話だが、ユーザ数拡大にしきい値を設けられたり、「はて? この制約はどのような理念で設けられたのだろう?」などと、将来像に煙幕を張るような感じ。

そう考えているのは私だけではなく、例えばこんな記事に記されている。「恣意的」という表現が的を得てると思う。

Twitter api ver1.1、痛いところ、痛くないところ(F's Garage =初代モバツイ開発者・えふしんさんのブログ)
http://www.milkstand.net/fsgarage/archives/001867.html

Twitterの戦略大転換 – 成功を支えてきた開発者を踏み台にして新たな拡大を目指す(SEO JAPAN)
http://www.seojapan.com/blog/twitter-big-step
※ The Next Webに掲載された「Twitter wants a billion users, and it’s prepared to sacrifice developers to get there」を翻訳した内容

自社のサービスを開放し、第三者がこぞって優秀なサービスやアプリを開発してくれているのに、それを閉じようという姿は、Twitter 経済圏の縮小・離散を招き、更に言えば、Twitter類似型サービス、または発展型サービスの勃興という方向性さえ想起させる。

無論、Twitter API を使ったサービスは継続されるし、今すぐエンドユーザが何か影響を受ける話でもない。が、サードパーティに対して何か魅力的なサポートをしない限り、優秀開発者が長期的に離れていき、ボディーブローのように効いていきそうな感じがしている。Twitter だけでなく、Facebook もマネタイズの方向性によってどうなるか分からない。突出した2サービスが、砂上の楼閣にならないことを祈りたいものだ。

バレーボールの監督は iPad で何を見ているのか?

昨夜、一番手に汗握ったのは女子バレーボール。逆転に次ぐ逆転で、中国側のマッチポイントでは万事休す... でしたが、アッパレな逆転勝利! 思わず声を上げてしまいました(笑)

さて、気になったのは眞鍋監督が腕に付けてた iPad。日頃バレーを観ないので、「今時の監督はこんなガジェットまで使うのか」と驚いたのですが、中身は結構凄いものらしいです。川合俊一の解説によると、相手選手の過去戦歴はもちろん、今戦っている試合に関する「誰がレシーブすると誰にトスが上がる」「誰のアタックが決まっているか」的傾向情報などもリアルタイムで(リモートクライアント形式で) iPad に届くそうです。遠隔地でデータ入力・状況分析されてるんですねぇ。

バレー界で最初にこの類のシステムを導入したのはイタリアで、はじめはイヤフォンを付けた監督が無線経由で情報入手してたのですが、会場の歓声で聞こえづらく画面閲覧型に変わったと、川合は話していました。バレーはベンチにPCを持ち込めるルールになっていて、今や世界中のチームがデータ分析ツールを導入しており、中でも日本はiPad化に成功したという流れのようです。

アメフトでは昔からHC(ヘッドコーチ)はもちろん、なんとフィールドにいるQB(クォーターバック)らのヘルメットにスピーカーが付けられていて、作戦参謀から無線で指示を受けてるのですが、バレーにもそういう先進性を取り入れる競技特性があるんだな、と今回知りました。

そもそもスポーツ全般でデータ分析技術が進化していますが、観客サイドでもこういうデータを見れると、一味違った観戦になるような気もします。そのうちスマートTVが普及すれば、こういうデータを普通に on demand で見られるようになるかもしれません。小1で野球のスコアーブックを付けてた私としては、このテの話題にはとても興味が湧きますね。

オリンピックは選手の活躍がもちろん第一。ただ同時に、「陰にこのような裏方が多数いて、そういう情報戦も世界レベルで巧みに行われている」ということを、眞鍋監督の iPad を見て改めて痛感しました。こういう分野こそ、日本が金メダルを取りたいところです!

※ 使っているアプリ「Volley Pad」「Data Volley」については、この記事が詳しかったです。

iPadと動画が変えた戦術 女子バレー飛躍の舞台裏 スポーツを支えるIT(2) (日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0803L_Y1A800C1000000/

プログラミングの一般化

プログラマーというと、世間の人からは特殊技能を持った人に思われがち。大工さんと似たような存在だ。

しかし、最近はビジュアルプログラミング分野が少しずつ拡大している。MITメディアラボが「Scratch」を、そして最近ではGoogleが「Blocky」なんてものを発表している。

もともと古くから Visual Basic などでフォームを作ったり、RAD開発ツールで簡便なプログラムは作れたし、ERPを使えばかなり複雑な業務処理も実現できるようになってはいる。が、それらは専門知識を前提に作られたプロ仕様のツールだ。

それに対して今出始めているのは、ブロックをくっつけるような操作でロジックそのものを作り上げるもので、見た感じ子供でもできそうなシロモノだ。プラレールで路線を作るような感覚で、実際にWeb上で処理が動き始める。このような流れが拡大すれば、徐々にプログラミングのハードルは低くなり、誰でもプログラミングができる素地が出来ていくだろう。

視点を変えれば、そもそもブログってのも、「HTMLが書けなくても誰でも自分の書きたいコンテンツをネット公開できるツール」だし、CMSなんてのも、「HTMLが書けなくても誰でも自分の作りたいサイトをネット公開できるツール」だ。どちらも一定の制約はあるものの、ネットでのコンテンツ公開という敷居を一気に引き下げた。

そしていよいよ、その領域がプログラミング分野へ進む。Webプログラミング分野においても、jQueryなどの普及で難易度の高い操作がより簡便に実現できるようなモジュール化が進んでいる。プログラマーという聖域が徐々に浸食されていくのは間違いない。

とはいえ、プレハブ工法によって一流の大工が潰えたかというとそうでもない。一流には一流の存在意義があり、揺らぎ無い。淘汰されるのは、機械でも変わりがきく程度のレベルを持った人々だ。技術が人を淘汰する。これは昔から変わらない構造である。